【航空管制官に必要な英語力】現役パイロットが実態と対策を公開

航空業界

航空管制官ってどれぐらいの英語力が必要なんだろう……

私の英語力で航空管制官になれるのかなあ……

航空管制官には一定の英語力が必要です。必要な英語力がわからないと、どの程度勉強すればいいのかもわかりません。

私は英語を独学し、アメリカでパイロットとなりました。世界各地の航空管制官と無線で交信し、管制官の英語力については詳しく把握しています。個人的なつきあいがある日本の管制官もいます。

ここではそんな私が、航空管制官に必要な英語力について解説します。

この記事を読めば、管制官になるにはどの程度英語を勉強する必要があるかなど、夢を実現する道のりがわかります。

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航空管制官が使う英語は専門用語が多い

航空管制官に語学力が必要な理由は、日ごろの無線交信がすべて英語だからです。JALやANAなど、日本の航空会社のパイロットに対しても、基本は英語で交信します。

使う英語は一般の英会話で使われる表現とは違うものもあります。航空の専門用語などです。

まずは、航空管制官が日ごろどんな英語を使っているのかをご紹介します。

“命令文”とその受け答えが多い

航空管制官が使う英語の特徴のひとつは、命令文が多いことです。実際にパイロットとのあいだでどんなやりとりが行われているか、例をご紹介します。

  • All Nippon 50, climb and maintain 6,000 feet.
    (ANA50便、6,000フィートまで上昇して維持してください)
    Roger, maintain 6,000, All Nippon 50.
    (了解、6,000を維持します、ANA50便)
  • All Nippon 50, expect further climb in 10 miles.
    (ANA50便、さらなる上昇は10マイル先で予定しておいてください)
    Roger, All Nippon 50, thank you.
    (了解、ANA50便、ありがとうございます)

管制官は“climb and maintain”(上昇して維持しなさい)や、“expect”(予定しなさい)など、パイロットに対して指示を出すことが多くなります。

実際の航空管制の流れについては、以下の記事でもっと詳しく紹介しているよ!

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英語力が問われるのは外国人パイロットとの交信

航空管制官の英語力が問われるのは、外国人パイロット、特にネイティブとの交信です。

ちなみに、航空管制官は成田や関空など、国際線が就航している空港の勤務でなくても海外のパイロットと交信することがあります。

航空管制官の仕事の中身などは以下の記事で詳しく解説しているよ!

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無線の交信には、先ほどご紹介した“climb and maintain”など、定型の表現がありますが、ネイティブのパイロットだと、ほとんど普通の会話のような英語で管制官に話してくることがあります。管制官と外国人パイロットの交信例をご覧ください。

  • United 50, climb and maintain 6,000 feet.
    (ユナイテッド50便、6,000フィートまで上昇して維持してください)
    United 50, would it be OK if we’d stay at this altitude for a minute or two? We’ve got some weather right above us.
    (ユナイテッド50便、1、2分この高度のままでもいいですか?真上がちょうど天候が悪くて)

ちなみに、もしこのパイロットが日本人のパイロットなら、こんな英語で応答するでしょう。

  • All Nippon 50, stand by please, due to bad weather.
    (ANA50便、悪天候により少々お時間ください)

“stand by”(待つ)や“due to~”(~が原因で)は航空無線でよく使われる表現です。ネイティブだと、このような定型的な表現を使うとは限りません。なので、航空管制官の英語力が試されます。

英語力が低いといわれる日本の管制官

日本の管制官の英語力は世界でも低いといわれています。“How are you?”(お元気ですか?)は航空の専門用語ではないので、日本の管制官には通じないとからかわれるほどです。

私自身、世界各地の航空管制官と交信して、日本は管制官としての能力は極めて高いと思います。ただ、「英語力」に限定すると、世界的な水準とくらべて低いといわざるをえません。

日本以外の非英語圏の航空管制官

日本以外の非英語圏の航空管制官の英語力は、かなり高いと思います。ヨーロッパ諸国はもちろんのこと、アジアでも韓国や中国の航空管制官の英語のレベルはかなりの高さです。

たとえば中国の場合、管制官と自国の中国人パイロットとのあいだの交信は中国語です。ごくたまに、訓練のためか英語で交信することもありますが、ほとんど中国語です。

私たち外国人パイロットの場合のみ英語での交信となります。中国人管制官の英会話スキルはかなり高く、アメリカ人パイロットと互角に意思疎通をしています。

日本の航空管制官が意思疎通に苦労する場面も

日本では、外国人パイロットとの意思疎通に苦労する場面があります。私たちパイロットが聞いている無線には、管制官とほかの飛行機のパイロットとのやりとりも入ってきます。たとえばこんなことがありました。

日本のある空港でアメリカの航空会社の旅客機が、ゴーアラウンド(着陸のやり直し)をしました。その際、管制官はパイロットに対し、周波数を変えるよう指示しました。ところが、その発音がネイティブのパイロットには理解できませんでした。

パイロットは“Say again.”(もう一度言ってください)や“Say the last digit.”(最後の数字をもう一度言ってください)などと、3、4回は聞きかえしていました。

日本人の管制官は何度もその数字を発音しますが、パイロットは聞き取れません。

結局パイロットは最後まで聞きとれず、“Your transmissions are very very poor.”(あなたの送信はわかりづらい)とまで伝えていました。

このように、なかなか互いに意思が伝わらないという場面は、日本の空では日常茶飯事です。

管制官は英語ができると思われている

英語が母国語ではない日本人からすると、「会話調でしゃべられたらかなわない」と思うかもしれません。「航空無線は専門用語で統一してほしい」と。

ただ、外国人パイロットからすると、「航空管制官は英語ができる人」というイメージがあるのです。

たとえば中国の場合、北京市内の中心部の飲食店でも、英語はほとんど通じません。「スプーン」さえ通じないほどです。

ところが管制官は英語をしゃべっている。なので非英語圏の航空管制官は教育水準が高くて、英語が通じるというイメージがもたれています。

航空管制官の採用では英語力が重視

航空管制官の採用試験では、英語力がこれまで以上に重視されています。外国人パイロットとの意思疎通がうまくいかないと、安全にも関わるからです。

航空管制官の採用試験対策については以下の記事で詳しく解説しているよ!

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1次試験で求められる英語力は英検2級以上

航空管制官採用の1次試験では、英語の聞き取り筆記試験があります。ここで必要な英語力は英検2級以上です。

英検2級といえば高卒程度です。一度は通った道ですので、英語が苦手な人でも、対策可能な範囲といえます。

英検2級の勉強方法については以下の記事で詳しく解説しているよ!

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2次試験では英語面接も

2次試験では、英語による面接もあります。英語のコミュニケーション能力がいかに重視されているかがわかります。

特に緊急事態などの際、パイロットの英語が聞き取れなければ致命的です。一定の英会話能力は航空管制官にとって必須です。

英語面接のポイントは、早く話す必要はないということです。完璧な英語である必要もありません。

相手の話していることを確実に理解することがポイントです。多少ぎこちない英語でもいいので、相手に意図を伝えられるかが問われます。

英語の面接対策は以下の記事で詳しく解説しているよ!

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航空管制官としてつとまる英語を独学する

航空管制官に必要な英語力は、十分独学できます。日本で管制官として活躍している私の知り合いも、高いお金をかけてまで英語を勉強していません。

ここにご紹介する方法で英語を勉強すれば、お金をかけずに管制官に必要なレベルの英語が身につきます。

テレビ使って英語を独学

私の経験からも、効果的なのはテレビを使った英語の勉強です。ニュースや映画、ドラマなどを英語で聞くと、次のようなながれで英語力が向上します。

  • 耳が英語に慣れる
  • 聞くうちに知らない単語・表現が耳に残る
  • 何度も耳に残る単語・表現を辞書で調べる
  • 語彙が増える

航空管制官を目指している人におすすめなのが、ナショナルジオグラフィックです。メーデーという番組があります。これは、実際に起きた航空事故を再現した番組です。

番組はもともと英語で制作されています。航空に興味のある人なら、最適の英語の教材です。

日本ではスカパー!ひかりTVなどの契約がないと見られません。新たに契約するのは面倒くさいかもしれませんが、実はスカパーやひかりTVが見られると、海外の映画やドラマも見放題です。

趣味と実益をかねて、この機会に契約するのはメリットがあると思います。訓練生や私も、ナショジオで楽しみにながら英語をたくさん吸収しました。

スカパーとひかりTV、どちらがメリットあるかを以下の記事で比較しているから参考にしてみて!

【徹底比較:スカパーとひかりTV】2つ契約してわかったこと

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管制官に必要な「話す力」は実際に使わないとダメ

管制官に必要な英語力とは、「話せる」ことです。難しい文法を知っていても、話せなければ管制官としてつとまりません。学生なら留学生と交流したり、海外旅行に出かけたりと、ありとあらゆる機会をとらえて英語を話すようにしましょう。

ただ、人によっては英語を使う機会がないという人もいると思います。その場合には、いま人気のオンライン英会話も選択肢のひとつです。

オンライン英会話はその安さと手軽さがメリットです。英語が苦手な私の訓練生も、オンライン英会話でパイロットという夢をかなえました。英語力が向上すれば、管制官という夢にも近づけます。

大手のDMMなら、25分の1レッスンが200円前後という格安で受講できます。無料体験があるので、自分に合うかどうか、まずは試してみるといいでしょう。
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まとめ

航空管制官にとって英語は“商売道具”です。多くの管制官が一人前になってからも、英語の勉強を続けています。

航空管制官を目指すなら、いまから英語の勉強を習慣づけることをおすすめします。採用試験でも英語力は必ずプラスになります。英語力を身につけ、しっかりと夢をつかみ取ってください。

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