【航空業界のこれから】採用計画の展望を現役パイロットが解説!

航空業界

航空業界はこれからどうなるんだろう……

コロナの影響で航空業界に入るのはあきらめたほうがいいいのかなあ……

新型コロナウイルスの影響で未曽有の危機に直面している世界の航空業界。これからどうなるのか、展望をある程度把握しておかないと、航空業界で働く夢をかなえられません。

私はアメリカでパイロットをしていて、日本の航空業界や世界のエアライン事情にも精通しています。

ここではそんな私が、航空業界のこれからについて解説します。

この記事を読めば、航空業界に入るための戦略を考えることができます。

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世界の航空業界の回復は2024年以降

航空業界は、新型コロナウイルスの影響で世界的に打撃を受けました。IATA=国際航空運送協会によると、2020年度の世界の航空業界の赤字額は、840億ドル、日本円で9兆円に上るといわれています。

そして、航空業界がコロナ前の水準に回復するのは、2024年以降と見られています。

アメリカの航空業界は回復の兆し

2021年の夏、アメリカの航空業界は早くも回復の兆しを見せています。アメリカの大手、デルタ航空は、2021年の第2四半期、コロナ後はじめての黒字となることを発表しました。これは、ワクチンがある程度浸透し、国内線の需要が回復してきたためです。

ほかの航空会社も次々と売り上げを伸ばしています。なかには、急激な需要の回復で、レイオフ(一時解雇)していた乗務員の復職が間に合わず、欠航が相次いだほどです。

ただ、国際線の需要は低迷したままです。今後の感染状況も見通せない部分があり、予断を許しません。

航空業界の本格的な回復は2024年以降

IATAは、世界の航空業界がコロナ前の水準にまで回復するのは、早くて2024年と見込んでいます。感染状況が改善したとしても、航空会社の経営体力がかなり落ちているからです。

乗客の減少で売り上げが落ち込んでいるだけではありません。感染対策のコストも、航空会社に重くのしかかっています。出発地での検温や健康証明書の提示、機内の消毒など、これらすべてを実施するとなると、大変なコスト増です。

日本の航空業界の採用活動は低迷

日本の航空会社の回復は、アメリカなどの先進諸国にくらべて遅れています。ワクチン接種の遅れで、感染状況が改善していないためです。

その結果、採用活動も低迷しています。2022年度入社の新卒採用について、ANAJALパイロットと障害者などに限定して実施しているのが実情です。

パイロットの採用

ANAもJALも、そのほかの航空会社も、パイロットについては採用を継続しています。ただ、航空会社によっては、採用人数を絞っています。とはいえ、各社で採用が続いているのは、パイロット志願者にとっては心強いことです。

航空会社が採用を継続する理由は、パイロットの育成に時間がかかるからです。一人前のパイロットを育てるのに、4年ほどかかります。数年後にコロナショックから回復して路線を拡充したくても、パイロットがいなければ飛行機を飛ばせません。

航空会社のパイロットになるには次の4つの方法があります。

  1. 自社養成
  2. 航空大学校
  3. 私学大学のパイロット養成コース
  4. 海外で自力でライセンス取得

航空会社を目指すなら、おすすめは自社養成です。訓練費はすべて会社が負担し、給料をもらいながら訓練を受けられます。そのほかの方法は、基本的には自分で訓練費を捻出しなければなりません。

自社養成がメリットあるのは経済的なことだけではありません。採用人数を絞っている航空会社としては、自社養成の人たちの育成が最優先です。航空大学私立大学を卒業しても、採用してもらえない可能性があります。航空大学や私大に進む場合には、直近の卒業生の就職状況をしっかりと確認するようにしてください。

パイロットになる方法については以下の記事で詳しく解説しているよ!

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CA(客室乗務員)

CAについては、大手航空会社は採用を凍結したままです。採用再開の見通しもたっていません。CAはパイロットと違い、必要なときにすぐに採用して働いてもらえることから、しばらくは採用の低迷が予想されます。特に大手航空会社は、国際線の収入に依存してきたため、回復には時間がかかる見通しです。

いっぽうで、国内線が中心の新規航空会社のあいだでは、採用の動きも見られます。ソラシドエアは新卒者を対象に、2022年度入社のCAの採用を行いました。そのほか新規航空会社やLCC(格安航空会社)のなかには、既卒者や経験者を対象に採用を行っているところもあります。CAになりたい人は、新規航空会社やLCCの動向をチェックしておくようにしてください。

CAへの夢をあきらめきれないという人はLCCなどは狙い目だよ!詳しくは以下の記事を参考にしてみて!

【コロナ渦でCAになるには】LCCの採用に期待できる理由!

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総合職やその他の職種

総合職やその他の職種についても、採用は凍結されています。採用再開の見通しはたっていません。理由はCAの採用と同じです。必要となればいつでも採用できるという事情からです。

総合職については、新規航空会社やLCCはもともと採用数が限られています。コストを抑えた経営をしているためです。採用再開は、経営が再び軌道に乗ってからになりそうです。

大手航空会社が設立のLCCに注目

採用がこれからどうなるか注目したいのは、JALが立ち上げたZIP AIRや、ANAが2022年度後半に設立予定の新たなLCCです。新型コロナウイルスによる教訓は、高コスト体質はリスクがあるということでした。大手航空会社はこぞって、低コスト体質のLCC事業に乗り出しています。

先行しているJALのZIP AIRはパイロット以外の採用はしていません。ただ、路線は次々に拡大しているため、これからの採用に期待できます。ANAが立ち上げるLCCについては、まだ詳細が明らかになっていませんが、経済性高いB787という機体を使って、アジア・オセアニア方面を中心としたLCCになる見通しです。

海外の航空業界は狭き門に

海外の航空会社の採用は、厳しい状況です。アメリカで回復の兆しがあるとはいえ、まずは自国の人の採用から始まります。アメリカの永住者ではなく、日本人として受験するのであれば、採用される見込みは少ないでしょう。

外資系航空会社のCAは厳しい状況

コロナ前までは、外資系航空会社のCAは人気の仕事のひとつでした。たとえば、ユナイテッド航空やデルタ航空は、“成田ベース”というCAの勤務地がありました。外資系航空会社の成田ベースに所属すると、成田発着の国際線に乗務できました。残念ながら、ユナイテッド航空もデルタ航空も、成田ベースそのものを廃止しました。

パイロットならチャンスはあるかも

いっぽうで、パイロットなら海外の航空会社に入社できるチャンスはあります。パイロットは日本と同じく育成に時間がかかるため、各社とも採用を継続しています。

ユナイテッド航空は、Aviate Programというパイロット養成プログラムの開始を発表しました。ユナイテッド航空の養成プログラムのもとでパイロットの資格を取得すれば、優先的に採用されるというものです。アメリカ版“自社養成”に近い内容です。

海外でパイロットになる方法は以下の記事で詳しく解説しているよ!

【海外でパイロットになる】コロナの影響や留学費用を経験者が解説!

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航空業界では管制官の人気が上昇

航空局で働く知人によると、コロナの影響で航空管制官の人気が高まっているそうです。航空管制官は国家公務員です。景気に左右されず、安定的に航空業界に携われる仕事です。

航空管制官の仕事

航空管制官の仕事は、飛行機の“交通整理”です。英語を使って無線でパイロットに指示を出します。国際線、国内線問わず、やりとりは英語が基本です。

到着機が、滑走路に向かって一列に並んでアプローチする様子を見ると、航空管制官の芸術的なワザを感じます。

管制官の仕事の範囲は大きく次の3つに分けられます。

  • 航空交通管制部    ・・・水平飛行中の高度の高い飛行機を誘導
  • ターミナル・レーダー ・・・空港周辺の離陸後や着陸態勢の飛行機を誘導
  • 飛行場管制業務    ・・・滑走路周辺や誘導路上の飛行機を誘導

「航空交通管制部」「ターミナル・レーダー管制」は、レーダーの画面を見ながら飛行機と交信します。「飛行場管制業務」は、空港で見かける「管制塔(タワー)」のなかで働く仕事です。実際の飛行機を見ながら離着陸の許可などを出します。

管制官の詳しい仕事の中身や、なる方法については、以下の記事で詳しく解説しているよ!

【航空管制官になるには】仕事の中身と受験方法をパイロットが解説!

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航空管制官になるにはどうすればいいのか知りたいという方もいるのではないでしょうか。この記事では、現役のパイロットが、航空管制官になる方法や仕事の中身について解説しています。管制官を目指している方必見です。

航空管制官は狭き門

航空管制官になるには「航空管制官採用試験」にパスしなければなりません。合格率はおよそ5%と狭き門です。

この試験に合格したあとは、航空保安大学校でおよそ1年間、管制官になるための訓練を受けます。訓練では法規をはじめ、管制官として必要な判断力や英語などを学びます。この訓練が終われば、晴れて航空管制官としてデビューすることになります。

最近は女性の管制官がかなり増えました。英語や飛行機が好きな人は、航空管制官もおすすめの仕事です。

航空管制官の試験対策については、以下の記事を参考にしてみて!

【航空管制官の採用試験対策】業界通の現役パイロットが解説!

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人気職業のひとつ航空管制官。採用試験の対策を知りたい人も多いのではないでしょうか。この記事では、航空業界を知り尽くした現役のパイロットが管制官の採用試験対策を解説しています。合格率10%前後という狭き門を突破したい人必見です!

航空業界で働く夢をあきらめないために

航空業界で働く夢をまだあきらめる必要はありません。航空業界への就職は、職種により事情は違います。自分が目指す職種について、情報収集を怠らないことがなにより大切です。

職種ごとに情報収集を

航空業界が完全に回復するのは、早くて2024年といわれています。それまで、CAなら採用は厳しい状況が続くでしょう。

でもそのいっぽうで、新規航空会社やLCCならCAになれるチャンスがあります。その場合、新規航空会社の乗務員ベースによっては、勤務地が地方都市になることも考えられます。ただ、いったんCAになると、別の航空会社に移ることも不可能ではありません。経験者の採用枠があるからです。自分の年齢とライフプランを考えながら、戦略をたてる必要があります。

パイロットについては明るい話題として、2030年問題があります。2030年ごろ、いまいるパイロットが大量に定年退職を迎えます。そのため、各社とも、実はパイロットについてはたくさん採用したいという思いを持っています。

パイロットの2030年問題については、大きなチャンス!以下の記事で詳しく解説しているよ!

【パイロット2030年問題】コロナでも今後採用が増える理由!

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パイロットが不足するといわれる2030年。コロナで打撃を受けた航空業界は、パイロットの採用をどう考えているのでしょうか?この記事では、現役パイロットが今後の見通しを詳しく解説しています。パイロット志願者必見です。

既卒採用を狙うならキャリアにつながる就職を

2024年を見据えて、いったんは別の仕事について、既卒での採用を狙う方法もあります。その場合には、航空業界の仕事につながる就職をするのが理想的です。

CA希望者ならサービス業や、英語を使う仕事。パイロット志願者なら、視力が悪くならないよう目を酷使する仕事は避けるほうが無難です。

航空会社は既卒者の採用も活発です。戦略的に考えていきましょう。

高い競争率をくぐり抜けられるように

航空業界はもともと人気の就職先で、高い競争率でした。これから再び採用が再開されるときには、競争率がいっそう高くなることが予想されます。

これを勝ち抜くためには、魅力的な人材にならなければなりません。CA希望者なら、いまのうちに立ち居振る舞いや、おもてなしの心などは身につけておくといいでしょう。

CA希望者がいますべきことは、以下の記事にまとめてあるよ!

コロナでCAの採用はどうなる?就職希望者がいますぐ行動すべきこと

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コロナの影響で凍結されたCAの採用再開はいつになるのでしょうか。この記事では、航空会社の関係者から聞いた内部情報も交え、今後の見通しやCA希望者がいますべきことを解説しています。CAになる夢を捨てられないという人必見です。

また、パイロット希望者なら、ほかのライバルと差をつけられるのは英語力です。航空会社は年を追うごとに、英語力を重視しています。自社養成では英語の面接もあります。訓練の一部は海外でも実施するため、英語力がないと夢をかなえられません。

パイロットの英語力については、以下の記事で解説しているよ!

【パイロットになるのに必要な英語力】現役パイロットが教えます

【パイロットになるのに必要な英語力】現役パイロットが教えます
パイロットになるにはどの程度の英語力が必要なのか気になりますか?この記事では、日米の航空業界に精通した現役パイロットが必要な英語のレベルを解説しています。パイロットを目指している人必見です。

まとめ

航空業界で働くことを夢見てきた人にとっては、コロナの影響がどこまで続くのか、悶々とした気持ちになると思います。その気持ちは痛いほどわかります。ただ、どこかの時点で航空業界の採用は再開されます。いまできることは、そのときに備えて準備を万全にしておくことです。

その準備は、仮に結果としてほかの業種に就職することになっても無駄になるものではありません。特に英語の勉強はしておいて損することはまったくありません。ぜひいまの時間を無駄にせず、有効に活用してください。

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