【パイロット2030年問題】コロナでも今後採用が増える理由!

航空業界

パイロットの2030年問題ってどれぐらい深刻なんだろう……

パイロット志望者にとって2030年問題って就職しやすくなるのかなあ……

パイロットが大量に不足することが見込まれる2030年問題。コロナという想定外の事態のなか、今後どうなるか正しく理解しておかないと、パイロットになるチャンスを逃してしまいます。

私は英語を独学し、アメリカでパイロットとなり、2019年からは教官をつとめています。アメリカと日本の航空業界については、だれよりも精通しています。

ここではそんな私が、パイロットの2030年問題について詳しく解説します。

この記事を読めば、パイロットの採用が今後どうなるのか、パイロット志願者はいまなにをすればいいのかがわかります。

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パイロットの2030年問題とは

パイロットの2030年問題は、2030年にかけて現役パイロットが一斉に定年退職を迎え、不足するとみられる事態です。

まずはパイロットの2030年問題について、どれほど深刻な問題なのか詳しくみてみましょう。

毎年400人規模のパイロットが必要に

エアラインパイロットの定年は68歳未満です。68歳の誕生日まえに定年を迎えます。

いま国内のエアラインパイロットの年齢構成で大きなウェイトを占めているのが、50代半ばから後半の世代です。この世代のパイロットたちは2030年までのあいだに、一斉に定年退職を迎えます。

国土交通省によると、定年退職するパイロットを補うには毎年新たに400人規模のパイロットが必要になるということです。

現在の主なパイロットの採用ソースは、航空大学校自社養成私立大です。これら3つの採用ソースからパイロットになる人の数は、年間150人から200人程度。必要な数の半分にも満たず、このままでは“パイロット不足”に陥るといわれています。

必要なパイロットはこれ以上にのぼる可能性も

航空業界では、実は必要なパイロットの数は国の試算を上回るのではないかという声もあります。定年をまえに退職するパイロットも少なくないからです。

パイロットは航空身体検査に合格できなければ飛ぶことができません。加齢にともない、検査に落ちてしまうパイロットも現実にはいます。

こうしたことを考えると、2030年問題はすでに起きつつあるという見方もあるのです。

コロナがパイロットの2030年問題に与える影響

パイロットの2030年問題を目前に控え、各エアラインはパイロットの採用を盛んに行ってきました。状況が一変したのは2020年、新型コロナウイルスの感染拡大です。

減便や運休が相次ぎ、今後の航空業界に黒い影を落としました。パイロットになるのはいまがチャンスだと思っていた人たちも、もんもんとした気持ちになったのではないでしょうか。

パイロットの2030年問題とコロナの影響を考えます。

コロナでもパイロットの採用は継続のエアラインも

2020年に新型コロナウイルスの感染が拡大した際、日本の多くのエアラインがパイロットと障害者の採用だけは継続していました。

コロナの影響が長期化するなか、2021年春の時点で、各社の2022年度のパイロット採用計画は次のとおりです。

  • ANA・・自社養成見送り
  • JAL・・自社養成募集予定
  • スカイマーク・・検討中。事務職など3職種は募集へ
  • ソラシド・・経験者を募集
  • スターフライヤー・・若干名募集
  • ジェットスター・ジャパン・・募集なし
  • ピーチ・・パイロットチャレンジ制度募集見送り

これらエアラインのうち、ANAJALは、自社でパイロットを育てる「自社養成」の制度があります。ピーチは、訓練費用などを支援する「パイロットチャレンジ」という独自の制度を設けています。

そのほかのエアラインは自前で育成する制度はありません。航空大学校などを卒業した人を採用する方式です。

1人のパイロットを育てるのに1,000万円以上かかるといわれています。航空業界が厳しい状況に置かれるなか、各社とも経営再建とパイロットの確保をどう両立させていくか、難しいかじ取りに迫られています。

アメリカでは5,000人規模の“自社養成”再開

そんななか、アメリカからは明るいニュースもあります。大手ユナイテッド航空のいわば“アメリカ版自社養成”の本格再開です。

ユナイテッド航空の試算によると、2030年までに新たに1万人のパイロットが必要となります。日本と同じように、アメリカでも定年退職によるパイロットの2030年問題があるためです。

そこでユナイテッド航空はフライトスクールを丸ごと買い上げました。訓練生に奨学金を出す形で、2030年までに5,000人のパイロットを育てる計画です。それでも必要な数の半分しか満たされません。

日本人でも英語が得意で、アメリカの永住権や市民権が取得できれば、このユナイテッド航空の制度に応募することができます。というのも、育成する5,000人のパイロットのうち、半数を女性と白人以外で満たそうとしているからです。
(参考URL:ユナイテッド航空パイロット育成プログラム)

ユナイテッド航空はコロナで経営が悪化し、苦境に立たされています。そんななかでも莫大なコストをかけてまでパイロットの育成に乗り出す背景には、航空会社が事業を拡大し売り上げを伸ばすには、パイロットの存在が欠かせないからです。

パイロットの採用は今後急速に拡大の可能性

日本でもパイロットの採用は、今後拡大する可能性があります。

ユナイテッド航空がパイロットの育成を再開したのは、ちょうどコロナのワクチン接種が行き渡りつつあるときでした。感染に歯止めはかからないものの、ワクチン接種を終えた人の旅行需要が増えてきたときです。

日本での今後のパイロットの採用の見通しについて、詳しくみてみます。

パイロットの採用は2023年度以降から増える可能性も

日本でのパイロットの採用は、早ければ2023年度入社の人たちから増える可能性があります。ワクチン接種が順調に進めば、アメリカと同じように旅行の需要が増えることが予想されるからです。

日本のエアラインもユナイテッド航空と同じように、内心、無理してでもパイロットを採用したいと思っています。旅行の需要が戻り、海外との行き来の制限がなくなったとき、パイロットがいなければ、事業を拡大できないからです。

パイロットを採用しない期間が2、3年間だけでもあると、年齢構成が崩れます。崩れると、将来、特定の時期にパイロットが一斉に定年退職を迎える“パイロット不足”が起きてしまいます。

エアラインとしては安定的な経営をするうえでも、コンスタントにパイロットは採用したいというのが本音です。

必要なパイロットがさらに増える可能性

コロナの影響で、実は必要となるパイロットがさらに増えるのではという見方もあります。

コロナがきっかけで、ボーイング777など燃費が悪い大型機の引退が一気に進みました。それによって起きたのは、燃費のいい機体への乗り換えだけではありません。より燃費のいい小型機へのシフトも強まっています。

コロナ以前から、日本ではダウンサイジングといって、小型機への“回帰”が進んでいました。飛行機の性能が良くなり騒音が大きな問題とならなくなったため、大型機による大量輸送から、小型機による多頻度運航がいまのトレンドとなっています。

小型機で何度も往復するような運航形態が今後増えると、当然パイロットの数も増やさなければなりません。こうしたことから、今後の運航形態の変化によっては、もっと多くのパイロットが必要となる事態も考えられます。

パイロットの採用ソースに変化も

今後、パイロットの採用ソースにも変化が生じるとみられます。

現在は、航空大学校自社養成私大が主な採用ソースです。冒頭触れたように、これら3つのソースあわせても、年間150人から200人程度のパイロットしかまかなえません。

では、残りの足りないパイロットをどこから補充するかというと、考えられるのは次の3つです。

  • 外国人パイロット
  • 自衛隊出身者
  • 自費でパイロットになったライセンス保持者

外国人パイロットの採用はいちばん手っ取り早い方法です。すでにエアラインで飛んでいる外国人パイロットと条件面で折り合いがつけば、通常は数年間の契約を結ぶことになります。

自衛隊で飛行機に乗っている人にエアラインパイロットになってもらうのもひとつの方法です。これは「割愛(かつあい)」と呼ばれ、これまでも行ってきました。

ただ、自衛隊はそもそもエアラインパイロットの養成機関ではないため、採用できる人数にかぎりがあります。

もうひとつは、自費でパイロット訓練を受け、ライセンスをもっている人の採用です。この採用方法は、実はアメリカでは主流です。航空会社にとって、いちばんお金がかからないからです。

ただ、日本とアメリカでは、航空のすそ野が違います。日本で、パイロットライセンスをもっていて別の仕事についている人は、正直それほど多くありません。

でも逆にいうと、パイロットを夢みて、アメリカなどで自費でライセンスを取得した人にとっては、これからチャンスが訪れるかもしれません。パイロットがいまの方法でまかなえきれないのは、自明の理だからです。

海外で自費でパイロットライセンスを取得する方法については以下の記事で詳しく解説しているよ!

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パイロット志望者がいますべきこと

これまで見てきたように、パイロットの夢はまだあきらめる必要はありません。

パイロット志願者がいますべきことを考えます。

日ごろから情報収集に努める

もっとも重要なことは情報収集を怠らないことです。各社のHPなどをこまめにチェックし、見落としがないようにしましょう。採用情報はアップされたと思ったら、すぐに締め切られてしまうことがあります。

航空業界全体のトレンドをつかんでおくことも大切です。そのことで、先行きの見通しが立てられることもあります。テレビのニュースや新聞などにも、日ごろからアンテナを張っておくようにしてください。

健康管理を怠らない

健康管理も重要です。パイロットの場合、単に健康というだけでは不十分です。航空身体検査に余裕をもって合格できるレベルでなくてはいけません。

採用の段階で、身体検査の基準をギリギリ満たす人だと、採用後に乗務できなくなってしまうおそれがあるからです。人間は加齢とともに、体の機能も衰えていきます。そのため、エアラインはある程度のバッファーをもって、つまり余裕をもって基準をクリアできる人を求めています。

パソコンやスマホを見るのはほどほどにするとか、脂っこいものは毎日食べないとか、基本的な健康管理をしっかりしてください。

パイロットに必要な英語力を磨く

英語力を磨くこともとても重要です。英語力について各エアラインは、年を追うごとに求めるレベルが上がってきています。背景には次の2つがあります。

  • 国際線を運航するエアラインが増えているから
  • 外国人パイロットと2人で運航する機会もあるから

日本の航空会社は、かつてJALは国際線、そのほかのエアラインは国内線などと、仕分けがされていました。いまはLCCも国際線を運航する時代です。海外の管制官やディスパッチャーと英語でやりとりできなければ、仕事になりません。

今後、採用ソースに変化が生じることも考えられるので、外国人クルーと2人で飛行機を飛ばすことは増える傾向にあるでしょう。

フライト自体は、英語の専門用語で問題はないと思います。ただ、悪天候時の対応や緊急事態など、機長と副操縦士のあいだで必要最低限の意思疎通ができないと、安全の脅威になります。

こうしたこともあり、各社は英語力を重視しています。

パイロットに必要な英語力については以下の記事で詳しく解説しているよ!

【パイロットになるのに必要な英語力】現役パイロットが教えます

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パイロットになるにはどの程度の英語力が必要なのか気になりますか?この記事では、日米の航空業界に精通した現役パイロットが必要な英語のレベルを解説しています。パイロットを目指している人必見です。

英語力を磨くには使う機会を増やす

パイロットに必要な英語力は、コミュニケーション能力です。管制官や同僚の外国人パイロットとの意思疎通で必要だからです。

こうした英語のコミュニケーション能力は、筆記試験対策のように一朝一夕にはできません。日ごろから英語を使う機会が必要です。

身近に留学生や外国人の知人がいれば、積極的に英語を使うようにしましょう。もし英語を使う機会がないという人は、オンライン英会話がおすすめです。

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オンライン英会話の選び方や使い方のポイントは、ぜひ以下の記事を参考にしてみて!

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まとめ

航空業界は新型コロナウイルスの影響で、暗い話ばかりです。ただ、パイロットの2030年問題については、実はパイロット志願者にとってはチャンスでもあります。コロナが多少落ち着いて旅行の需要が戻れば、エアラインは一斉にパイロットの採用を再開する可能性が高いからです。

パイロットになる夢をあきらめず、日ごろから情報収集に努めてください。そして、いまのうちに英語の勉強をしっかりしておきましょう。

英語のコミュニケーション能力は採用試験で必要になります。パイロットになってからも英語はついてまわります。夢がかなったあと苦労しないように、英語の勉強だけはいまからしておいてください。

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