
英語にも敬語の表現ってあるのかなあ……

英語で敬語の言い方を知りたいなあ……
英語にも敬語の表現はあります。それを知らずにいると、初対面の人にタメ口をきいていたということになりかねません。
私は英語を独学し、アメリカでパイロットとなりました。アメリカで生活するなかで、英語にも“敬語”があることがよくわかりました。
ここではそんな私が、英語での敬語の表現を詳しくご紹介します。
この記事を読めば、相手に失礼にならないTPOに応じた英語の表現がすべてわかります。
英語にも“敬語”の表現はある!
「敬語」は日本語独特の表現だと思っている人がいたら大間違いです。英語にも敬語はあります。ただ、使い方やニュアンスが、日本語とは違います。
日本語では、初対面の人や職場の上司、先輩には敬語を使います。英語で敬語を使う相手は、こうした人たちだけではありません。
まずは、英語で敬語を使うシーンをご紹介します。
立場が違うとき
英語で敬語を使うのは、立場が違うときです。相手が、社会的に地位のある人の場合などに敬語を使います。たとえば次のような相手です。
- 大統領
- 政治家
- 学者
- 医者
こうした人たちを名字で呼ぶ場合、Mr.やMrs.は一般的に使いません。President. Senator. Professor. Doctor.などを使います。こうした肩書きで呼ぶ相手は、敬語の対象と思ってかまいません。
フォーマルな場面のとき
もうひとつ、英語で敬語を使う場面は、フォーマルなシーンです。相手の立場にかかわらず敬語を使います。たとえば次のような場面です。
- 冠婚葬祭
- 就職の面接
- 初対面の顧客との商談や面談
初対面の人と1対1で会話する際には必ずしも敬語である必要はありません。相手との関係によります。
メールのとき
ビジネスメールのときには、敬語を使うのが一般的です。話し言葉ではなく書き言葉になるため、より丁寧な表現を使います。
ビジネス上のメールではなくても、同じことがいえます。初対面の相手へのメール、留学や就職の問い合わせ…敬語を使うほうが無難です。

英語でのメールの書き方については以下の記事で詳しく解説しているよ!
英語のメールの書き方は?書き出しや挨拶から結びまで例文もご紹介!

英語の“敬語表現”のポイント
日本語の敬語は「尊敬語」と「謙譲語」があります。同じ意味の言葉でも、状況に応じて「ご存じ」「承知する」など変化します。
英語では、敬語だからといって単語自体が変化することはありません。英語の敬語を理解するための基本的な考え方をご説明します。
相手をほめるのが“敬語”の第一歩
英語の敬語の基本的な考え方は、相手をほめる、相手をリスペクトする気持ちを伝えることです。
具体的な例をご紹介します。相手から“Thank you.”と感謝されたとき、「いえいえ、とんでもございません」と敬語を使う場合です。
“You’re welcome.”にveryを加えるだけでも丁重なニュアンスになります。“It’s been my pleasure.”は「私の気持ちですから」という意味で、丁寧な表現です。
英語の敬語の具体的な例文はこのあとご紹介しますが、基本的な考え方として、相手への敬意が敬語の第一歩だということを理解しましょう。
相手の名前を意識的に使う
もうひとつ大切なことは、会話のなかで相手の名前を意識的に使うことです。
たとえば先ほどの英文を使う際、次のように相手の名前をあえて付け加えます。
ジョンソン先生という会話の相手の名前を、“You’re very welcome.”のあとか、“my pleasure”のあとにつけます。相手の名前を意識的に使うことで、心づかいが感じられます。
相手との関係性でファーストネームで呼び合っている場合は、もちろんファーストネームでかまいません。
相手の目をしっかり見て話す
英語では日本語以上にアイコンタクトがとても大切だとよくいわれます。敬語を使う相手ならなおさらです。話を聞くときも、話すときも、相手の目をしっかり見ることです。アイコンタクトは相手に対する誠意を示すからです。
相手の目を見ずにいくら敬語の表現を使っても、印象は悪くなります。しっかりとしたアイコンタクトがあって初めて、誠意が伝わります。
相手の目を見つめて話すのは、日本人のなかには気恥ずかしいと感じる人もいるかもしれません。ただ、英語で敬語のニュアンスを伝える際にはとても重要です。
英語でも謙遜することはある
自分を卑下したりへりくだったりすることによって、敬語を表現することもあります。たとえば次のような表現です。
- I could be wrong, but ~
(私が間違っていたら恐縮ですが~) - Being self-indulgent, ~
(手前みそなことで恐縮ですが~)
自分の意見や、自慢話になりそうなときに謙遜する表現です。このように、ひと言へりくだる表現をつけることによって、相手を敬った言い方となります。


英語の謙遜表現については以下の記事で詳しく解説しているよ!



具体的な英語の“敬語表現”
ここからは、具体的な英語での敬語の表現をいくつかご紹介します。
“~していただけますか?”とお願いする敬語
人になにかをお願いする表現は、タメ口なら「~してくれる?」、敬語なら「~していただけますか?」となります。くだけた言い方から丁寧な表現まで順番にならべると次のようになります。
- Can you talk to him about it ?
- Would you talk to him about it ?
- Could you talk to him about it ?
- Would you take your time to talk to him about it ?
いずれも「そのことについて彼に話してもらえませんか?」という意味です。1から4に行くにしたがって、丁寧な表現となります。実際には、もっといろんな言い方がありますが、ここではわかりやすくするためにこれらの表現に絞ってご紹介します。
「~してもらえませんか」という敬語は、Would you ~?やCould you ~?です。さらに丁寧に「~していただけませんでしょうか」という場合が、最後の表現です。直訳すると、「そのことについて彼とお話する時間をとっていただけませんでしょうか?」という意味になります。
このようにWould you take your time to ~?は、かなり丁重な言い方です。
感謝の気持ちを表す敬語
“Thank you.”や“Thank you very much.”をたくさん使うのも、立派な敬語です。相手の名前をつけて“Thank you very much, Doctor. Johnson.”のように使うと、相手を敬うニュアンスがさらに強まります。
それ以外によく使う感謝を表す敬語表現をご紹介します。
- I really appreciate it.
- I am so grateful.
- You’ve been so nice.
- You are so kind.
- I can’t thank you enough.
それぞれ細かなニュアンスの違いはあるものの、基本的にはすべて「ありがとう」を伝える敬語です。これらの表現は、組み合わせて使うこともできます。たとえば次のような使い方です。
“~してもよろしいでしょうか?”と許可を求める敬語
受験英語などでは“May I ~?” という表現を覚えた人もいると思います。「~してもいいですか」と許可を求める表現です。ただ、使い方によっては、まるで子どもが許可を求めているような稚拙な言い方に聞こえます。
相手へのリスペクトを込めて許可を求めるなら、次のような表現です。
- Could I come back later?
- I wonder if I could come back later.
- Would it be all right if I’d come back later?
いずれも「のちほど戻ってきてもよろしいでしょうか?」という意味です。Could I ~? は May I ~? を丁寧にした表現です。
I wonder if ~ は直接的には質問文ではないため、発音の際に語尾を上げる必要はありません。ただ、意味としては「~してもよろしいでしょうか」という質問です。直接的な質問にしないことで、控えめで丁寧なニュアンスを出しています。
Would it be all right if I’d ~は文法的には「もし~したとしても大丈夫ですか」の意味です。つまり、「~してもよろしいでしょうか」という敬語表現になります。
謝罪の気持ちを表す敬語
「ごめんなさい」はタメ口やカジュアルな会話なら、“Sorry.” や “I’m sorry.” です。敬語が必要なシーンでは、次のように表現できます。
- My apologies.
- I would like to apologize for the inconvenience.
- I wish I could make up for the inconvenience.
いずれも「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」という意味です。ポイントは、apologize(謝る)という動詞や、名詞のapology(謝罪)という言葉の使い方です。My apologiesというだけでも、「謝罪させてください」という丁寧なニュアンスが伝わります。
I wish I could make up for ~は直訳すると「~の埋め合わせができればいいのですが」という意味です。実際この表現が使われるときは、埋め合わせや取り返しがつかないことが多く、悔やんでいる気持ちが伝わります。
ちなみに、「迷惑」はここではinconvenienceという単語を使いました。多くの日本人が使うtroubleという単語でも問題ありません。アメリカでは、文脈によってはinconvenienceがよく使われます。
別れ際の敬語表現
英語の“Bye”という表現は、日本語の「バイ」というカジュアルなニュアンスとはやや異なります。フォーマルな場でも使えます。
とはいえ、敬語を使う相手にはちょっと……と抵抗がある人もいると思います。そこで、丁寧な別れ際の表現をご紹介します。
- Nice talking to you.
- Have a great day.
- Have a great week/weekend.
- Have a great morning/evening.
Nice talking to you. は「お話できてよかったです」というあいさつです。Have a great day. やHave a great week/weekend.は、相手への心づかいが感じられ、敬語を使う相手にはふさわしいでしょう。
「英語の敬語=あいまいな表現」と勘違いしない!
英語で敬語の表現をする際、注意することがあります。それは、婉曲的な表現をすれば敬語になると勘違いしないことです。
日本語では、相手を嫌な気持ちにさせないために、「無理です」と言わず「難しいです」などとあいまいな表現をすることがあります。
英語にも婉曲的な表現はあります。以下にご紹介しますが、あいまいな表現を多用すると、かえって相手を混乱させてしましますので注意しましょう。
“Yes” “No”をぶっきらぼうにしない方法
相手から質問されてYesかNoでこたえることは多いと思います。ただ、Yes/Noだけだとぶっきらぼうで丁寧さにかけます。
ぶっきらぼうにならない方法があります。それは、この記事の前半でもお伝えしましたが、相手の名前とともに使うことです。“Yes, Doctor Johnson./No, Doctor Johnson”などです。
もし相手の名前がわからなければ、かわりにsirやma’amをつけるといいでしょう。これだけで、頭ごなしにNoと言っている印象はなくなります。
表現をやわらかくしたいときに使える“maybe”
時として、日本人は玉虫色の表現を好みます。歯に衣を着せぬ言い方は、ダイレクトすぎて失礼に感じるからです。
そんな日本人に便利な表現をご紹介します。それは“maybe”という単語です。この単語を、文章のアタマにつけることで、強い「断定調」ではなくなります。やや婉曲的な、やわらかい表現になるのです。以下に例を見てみましょう。
- Maybe you should make your decision soon.
- Maybe that’s impossible.
- Maybe I can’t do that.
maybeはYou should ~のまえに加えて、「ひょっとしたら~したほうがいいかもしれませんね」と語気を弱めます。1つめの文章の意味は「ひょっとしたら、早めに決めたほうがいいかもしれませんね」という意味です。敬語を使う相手に「~したほうがいいですよ」と提案する場合、“上から目線”とみられないためにはmaybeをうまく使えるといいでしょう。
相手をがっかりさせるようなことを伝える場合や、断りを入れるときも、maybeを使うと、こちらの意思をやんわりと伝えることができます。2つめの文章の意味は「ちょっと、それは無理ですかねえ」、3つめは「ちょっとそれはできかねます」という意味です。
ただ、多用すると、表現があいまいになりすぎるので注意が必要です。
まとめ
英語の「敬語」は相手への尊敬が基本です。相手がすごいと思えば素直にほめる。相手の名前を呼んで語りかけ、目をしっかり見て話すなどが大切です。それができずに敬語表現だけを覚えても、気持ちは十分伝わりません。
相手に敬語の表現が使えるようになれば、英語の上級者です。ぜひ実践してみてください。