
英語にも標準語ってあるのかなあ……

私の習っている英語は標準語なのかなあ……
英語は国や地域によって発音やアクセントが異なります。違いを知らないと、自分の英語が標準語なのかどうか、わかりません。
私は英語を独学し、アメリカでパイロットとなりました。アメリカ各地を飛び回り、各地の発音の違いなどについては知り尽くしています。
ここではそんな私が、英語の標準語はどの地域の言葉を指すのか解説します。
この記事を読めば、地域ごとの英語の特徴がすべてわかります。
英語は大きくわけてアメリカ英語とイギリス英語
英語は大きく2つにわけられます。アメリカを中心とした地域で使われているアメリカ英語と、イギリスを中心としたイギリス英語です。
アメリカ英語を話す人は、アメリカ英語こそが標準語と考えています。イギリス英語を話す人も同じように考えています。それぞれ、どれほどの違いがあるのか、まずはアメリカとイギリスの英語の違いをみてみます。
アメリカ英語はRの発音が深い
アメリカ英語は主にアメリカとカナダで使われています。一般的な特徴は以下のとおりです。
- carなど単語のなかのRを深く発音
- 「形容詞+名詞」の場合、アクセントは名詞
(例)small town - スラングが多い
アメリカ英語は全体としてRの発音が深く、いわゆる巻き舌で発音するのが多いのが特徴です。
また、アメリカ英語とイギリス英語では、単語のスペリング自体が変わってしまうものもあります。
- center(米)↔centre(英)
- program(米)↔programme(英)
カナダはアメリカ英語ですが、特に東部ではイギリス英語のつづりが使われることがあります。
イギリス英語こそ“標準語”という人も
国の成り立ちからも、イギリス英語のほうが歴史があります。そうしたことからイギリス英語こそが世界の英語の“標準語”だという人がいます。もちろん誇り高きイギリス人はそう主張しています。
イギリス英語が使われているのは、イギリスやオーストラリア、ニュージーランドなどです。そのほかイギリス統治下にあった香港でも使われています。
イギリス英語の特徴はアメリカ英語と正反対です。
- Rを浅く発音
- 「形容詞+名詞」の場合、アクセントは形容詞
- スラングはアメリカほど多用しない
アメリカ英語が巻き舌のRを多用してるのに対して、イギリス英語は歯切れのいい音です。アメリカ英語のようにスラングを多用しないことも違いです。
前置詞の使い方もアメリカ英語と異なる部分があります。
- I met him on the street. (米)
I met him in the street. (英) - He lives on the island. (米)
He lives in the island. (英)
アメリカ英語でonをつかうところ、inを使うことがよくあります。

アメリカ英語とイギリス英語の違いについては以下の記事で詳しく解説しているよ!

アメリカ英語の標準語は西部から中西部
アメリカ英語の“標準語”といわれているのは、西海岸から五大湖周辺の中西部にかけて広く使われている英語です。実際には、アメリカ国内のなかでも地域によって細かい発音の違いなどはありますが、大きくわけると次の3つにわかれます。
- 西部から中西部
- ニューヨーク以北の北東部
- ワシントンDC以下の南部
“標準語”はもっとも広い範囲で使ている
西部から中西部にかけての英語は、いわゆるアメリカの“標準語”といわれています。州でいうと、西はカリフォルニア、オレゴン、ワシントンから、南部をのぞく五大湖周辺の地域までです。
代表的な都市でいうと、シアトル、サンフランシスコ、ロサンゼルス、デンバー、シカゴ……このへんは標準的なアメリカ英語です。ニューヨークも“標準語”ですが、地区によっては独特なアクセントがあります。
ラジオやテレビの英会話講座や、英会話学校で英語を教える多くのアメリカ人は、この“標準語”地域出身の人が多いといえます。
アメリカ北東部はややイギリス英語に近い
アメリカ北東部の英語は、New England Accentと呼ばれています。ニューヨーク以北からメーン州にかけての地域がNew England Areaと呼ばれているからです。
なかでもボストン周辺のアクセントは特徴的です。特徴は次の2つです。
- イギリス英語のようにcarのRを発音しない
- [a]が[ɔ]に近い音に
特に2つめは特徴的で、jobの発音をする際、かなり「オ」の音が聞こえます。アメリカ英語では本来、「ア」に近い発音です。
New England Accentの英語を話すとしてよく知られていたのは、かつてのジョン・F・ケネディ大統領です。名演説では、かなりボストンのなまりが入っています。
アメリカ南部は母音を伸ばして発音
アメリカ南部の英語は、Southern Accentと呼ばれています。ワシントンDCから南部フロリダにかけての広い範囲と、西はテキサス州あたりまで含まれます。
南部の英語は“southern drawl”と呼ばれ、母音を伸ばしたりつなげたりして、ゆっくり間延びした感じで発音するのが特徴です。
南部アーカンソー州出身のクリントン元大統領は、かなり強い南部のなまりがあります。
標準語地域の都市部からは流行語も生まれる
アメリカ英語の“流行語”の多くは、標準語が話されている地域の都市部から生まれています。たとえば“dude”です。「男の人」という意味です。
“Hey Dude”や“What’s up, dude?” のように、くだけた表現として使います。 “guy”をさらにスラングっぽくした単語です。
この単語は、もともとカリフォルニアで生まれたといわれています。それが徐々に全米に広がり、いまではアメリカ人ならだれもが使う表現となりました。
イギリス英語の標準語はクイーンズ・イングリッシュ
イギリス英語の標準語は、王室が使っているクイーンズ・イングリッシュとされています。イギリス英語は、アメリカ英語以上に方言やアクセントの違いがあります。文化や歴史の背景が異なる地域が集まって、ひとつの国を作っているからです。
クイーンズ・イングリッシュを使っているのはごくわずか
イギリスの標準語、クイーンズ・イングリッシュですが、実際に日常的に使っているイギリス人は10%にも満たないといわれています。
クイーンズ・イングリッシュは、イギリスの公共放送BBCや王室が使っている洗練された英語です。
実際には、ふだんは地域のなまりのある英語を話し、パブリックな場所で話すときにクイーンズ・イングリッシュを使うという人が少なくありません。中国語が、北京語を中心に「共通語」を作り出しているのとの似ているところがあります。
イギリスではアメリカと違い、標準語のクイーンズ・イングリッシュを話せるかどうかが、学歴や教養を計るモノサシとされています。なので、社会的な地位を獲得しようとしている人は、みなこぞってクイーンズ・イングリッシュを使おうとします。ジョン・F・ケネディ大統領やクリントン元大統領のように、なまりのまま演説するということはありません。
ロンドン郊外のコックニーアクセント
イギリスに数あるなまりのなかでよく知られているのが、ロンドン下町のコックニーアクセントです。次のような特徴があります。
- [ei]を[ai]と発音
- haveなどアタマのhを発音しない
コックニーアクセントが登場する映画の名作といえば、オードリー・ヘップバーン主演の“My Fair Lady”です。下町の貧しい娘が、言語学者の家に泊まり込み、なまりを矯正。やがて気品高い女性として社交界へデビューするというサクセスストーリーです。
そのとき練習に使っていた文章がこちらです。―
コックニーアクセントでは、文章中の[ei]がすべて[ai]と発音されてしまいます。
この映画からも、イギリスではいかに標準語を獲得することが社会で“成功”するために必要かがわかります。
イギリス国内には40ものなまり
イギリス国内にはあわせて40ものなまりがあるといわれています。代表的なものとしては次のようなものがあります。
- ウェールズアクセント
- ヨークシャーアクセント
- スコティッシュアクセント
- アイリッシュアクセント
これらの地域でも、公教育や行政機関では標準語のクイーンズ・イングリッシュが使われることがあります。
オーストラリアやNZの標準語
オーストラリアやニュージーランドは基本、イギリス英語です。それをさらに自国風に“カスタマイズ”したような英語が標準語として使われています。
オーストラリアは標準語しかないと思っていい
オーストラリア国内には、顕著ななまりはありません。なので、オーストラリア全土で使われている英語そのものが標準語といえます。
オーストラリア英語は、Rの発音をほとんどしないことなどはイギリス英語と同じです。違いは、次のとおりです。
- [ei]を[ai]と発音する
- [ou]を[ai]のように発音する
たとえば次のような文章があるとします。
オーストラリア英語では、[ei]と発音するところをすべて[ai]と発音します。なので、「トゥダイ」「マンダイ」のような発音です。同じようにたとえば次のような文章でー
このhomeは[haim]という発音になります。
ニュージーランド英語の標準語はイギリス英語
ニュージーランド英語の標準語は、イギリス英語です。オーストラリアのような独特な癖は感じられません。ニュージーランドでは、英語のほかマオリ語と手話が公用語になっています。このため英語の標準語は、アメリカやイギリスほど意識されることはないといわれます。
ただ、ニュージーランドにはスコットランドから多数の移民が入ってきたこともあり、スコットランド英語に近い言葉を話す人もいます。スコットランド英語はkやpなどの破裂音をかなり強めに発音するのが特徴です。
ニュージーランドにはさまざまな人種がいるため、日常的に耳にする英語は実にバラエティに富んでいます。
まとめ
英語の標準語は、アメリカとイギリスでは意味合いがかなり違います。アメリカでは、多くの人が使っている一般的な言語にすぎません。アメリカの政治家がみずからのなまりを矯正して“標準語”で話すことはありません。
ところがイギリスは違います。標準語を身につけることが、社会で教養ある立場のある人だと認められることを意味します。
英語の標準語や地域事情の違いがわかると、英語学習がいっそう楽しくなると思います。